近所の開業医が病に倒れた。
我が家では、親子2代に渡って世話になった医者だ。
俺は残念ながら、母親の死に目に会うことはできなかったが、
母親の最後を看取ったのも、その医者だった。
見舞いに行くと、1本のカセットテープを渡された。
医「君のお母さんが、死に際に録音したカセットだ。」
俺「なんで今まで・・・。」
医「墓まで持っていくつもりだったが、今の君なら乗り越えるだろう。」
カセットテープなんて前時代的な代物、見るのも初めてだ。
幸い、古いAV機器を収集している友人がいるので、頼むことにした。 友「これが巻戻し、再生、早送り、一時停止、停止。」
友「で、この赤いボタンが録音だから、押さないように。」
友「カセットの爪を折っておくと、録音できないようにできるぞ。」
友「爪を折ってしまっても、セロテープを貼ると録音できるんだ。」
友「更に、このボタンが押してあると、ぎゃ!」
いつ終わるとも知れない友人の説明に、うんざりしていた俺は、
半ば強引にカセットデッキを奪い取った。
俺「おう、それだけ聞けば十分だ、悪いが借りていくぞ。」
友「いいけど、大切に扱えよな!」
早速、家に帰って再生してみると、
ガタガタと騒がしい音が入っていた後、
しばらくして人の声が聞こえ始めたが、
はっきり言って、意味不明だ。
「えにせにせにせにす
いのなねさわいそまみ
あべれかねらむえあせあも
いうきなげあも」
後日、その真意を知ったとき、
俺は本当に悲しかった。
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意味がわかると怖い話1164 「近所の開業医が病に倒れた 」
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