アメリカの名ゴルファー、ロバート・デヴィンセンゾが、トーナメントに優勝したときのことだ。
賞金の小切手を受け取り、居並ぶカメラににっこりほほえんだ彼はクラブハウスに戻って帰り支度をした。
ひとりで駐車場を歩いていく途中、顔色の悪い赤ん坊を抱いた若い女が近寄ってきた。
女は「優勝おめでとうございます」と言ったあと、こう訴えた。
「あたしの赤ちゃんが重い病気でいまにも死にそうなんです。でも、お金がなくて病院に連れて行くこともできません……」
デヴィンセンゾは彼女の話に心を動かされ、ペンを取り出すと、受け取ったばかりの小切手にサインした。
「これで赤ちゃんを助けてやりなさい」
そう言って、彼は女の手に小切手を押し込んだ。
翌週、彼がクラブハウスで昼食を食べていると、プロゴルフ連盟の役員が彼のテーブルに来て言った。
「駐車場の係の話だと、あなたは先週優勝したあと、若い女に会ったそうですね」
デヴィンセンゾはうなずいた。
「そうですか……それじゃ、お知らせしますがね、そいつは詐欺ですよ。
その女には病気の子なんかいないし、結婚だってしてないんですから。だまされたんですよ」
「じゃ、死にかかっている赤ん坊はいないってことかい?」とデヴィンセンゾ。
「そのとおりです」
デヴィンセンゾはそれを聞いて言った。
「ならあれはなんだったんだ」
賞金の小切手を受け取り、居並ぶカメラににっこりほほえんだ彼はクラブハウスに戻って帰り支度をした。
ひとりで駐車場を歩いていく途中、顔色の悪い赤ん坊を抱いた若い女が近寄ってきた。
女は「優勝おめでとうございます」と言ったあと、こう訴えた。
「あたしの赤ちゃんが重い病気でいまにも死にそうなんです。でも、お金がなくて病院に連れて行くこともできません……」
デヴィンセンゾは彼女の話に心を動かされ、ペンを取り出すと、受け取ったばかりの小切手にサインした。
「これで赤ちゃんを助けてやりなさい」
そう言って、彼は女の手に小切手を押し込んだ。
翌週、彼がクラブハウスで昼食を食べていると、プロゴルフ連盟の役員が彼のテーブルに来て言った。
「駐車場の係の話だと、あなたは先週優勝したあと、若い女に会ったそうですね」
デヴィンセンゾはうなずいた。
「そうですか……それじゃ、お知らせしますがね、そいつは詐欺ですよ。
その女には病気の子なんかいないし、結婚だってしてないんですから。だまされたんですよ」
「じゃ、死にかかっている赤ん坊はいないってことかい?」とデヴィンセンゾ。
「そのとおりです」
デヴィンセンゾはそれを聞いて言った。
「ならあれはなんだったんだ」