突然だが、俺は亀を飼っている。
目に入れても痛くない程可愛がってる奴等だ。
しかし俺はしがないサラリーマン稼業・・・妻子を食わせていくのに精一杯だ。
いや、正直なところ最近はそれすらキツくなってきた。
妻に「亀なんかにかまけてる暇があったら私たちに贅沢させてよ!」と言われていたもんだw
時計を見るとPM7:02 あいつらの甲羅を洗いに行くか。
玄関のドアをなんとか開けると、不機嫌そうな表情を浮かべた青白い顔の宅配業者がドアを叩くような形で立っていた。
ソイツは俺を見るや否や、ギクッとしたように見え、荷物を置いてそそくさと帰っていった。
「なんだアイツ」と思いながらも、俺は荷物を家の中に蹴りやった。
庭に行き、水槽の蓋を開ける。
中ではワシャワシャと無数の亀が蠢いている。
俺はそのまま顔を水槽の中に突っ込んだ。
家の中に戻り、寝室の襖をぶっきらぼうに足で開ける。
中では妻と子が凄まじい形相でこちらを見ている。
(そろそろ潮時だな・・・)と思い、俺は気まずそうに腕をパタパタさせた。