仮名A子の家に行った時の話。
夜十時頃、ビールを飲みながら話をしていると、
突然天井近くで、「カチッ!」と大きな音が響いた。
びっくりしていると、今度は玄関のドアが、「ガンガンガン!」と鳴り出した。
A子が外の様子を見に行ったけど、すぐに戻って来て、
なぜか風呂場に入っていって、そこでへたりこんで放心状態になっていた。
たぶん嫌な相手、昔の男でも押しかけて来たんだろう、と思って、
ドアの所に行って、のぞき穴から見てみた。
黒ずくめの白い顔をした女が、意味不明に痙攣しながら立っていた。
ナンジャコリャ!と飛びのくと、背後にA子がいた。
彼女は、ちょっと待っててね、と言うと、自転車の鍵を取って外に出ていった。
30分くらい待っていると、A子が一人で戻って来た。
…何だったのあれは?とおそるおそる問いかけると、彼女は疲れたように言った
「わたしのお母さん」