ある田舎から出てきた同僚と、飲みに行ったときのことだ。
飲みながらお互いの故郷の話をした。
彼の故郷はど田舎だが、過疎や商売で悩むことはないらしい。
俺の故郷も田舎だが、彼の故郷とは正反対だ。
興味を持った俺は、彼にいろいろ尋ねてみた。
「町で何か特別なことでもしてるのか?」
「いや、俺たちはなにもしてないよ」
「じゃあ、何か有名なものでもあるのか?」
「ああ、それなら・・・」
彼は名所と思われる場所をいくつかあげたが、聞いたこともないところばかりだ。
それから彼は、近々故郷へ帰って家業の宿屋を継ぐということを、嬉しそうに話してくれた。
その日は早めに切り上げることになり、別れ際に彼は寂しそうに言った。
「もし俺の故郷にくることがあったら、ぜひ知らせてくれよ。
表向きは歓迎できないけど」