20XX年、クローン技術が一般化していた。
主な目的は臓器等のスペアで、一部の富裕層がそれを利用していた。
クローンは五感を遮られたカプセルの中で育つため、自我を持つことはなかった。
『自我を持たない人間は、人間に非ず』
倫理的にはこう定義されているため、この育成方法がとられていた。
ある夜、一人の子供が急患で運ばれて来た。
その子供は内臓を損傷しており、両親はクローンによる移植手術を希望していた。
怪我の原因は、両親が共働きで不在中、子共達がふざけ合っている内に階段から落ちたらしい。
看護士が急いでクローンを手術室へ運ぶ。その途中でクローンが目を覚ました。
その瞳があまりにも可愛いかったので、看護士が思わず、
「遺伝子的には全く同じなのに可哀想…」
「遺伝子ってなあに?」