ある日、残業で夜遅く家に帰ってくると、妻の姿が見当たらない。リビング、バスルーム、トイレ、どこにもいない。
二階か?
もし寝ていたら気の毒なので、そーっと階段をのぼる。
ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ
二階につくと、寝室のドアのわずかな隙間から、光がこぼれている。
その隙間から中を覗くと、妻がこちらに背を向けて座っているのが見えた。
何か・・・紙に書いている。
「おいっ」
僕が声をかけると、妻はとても驚いた様子でこちらを振り返り、慌ててペンで文字を塗り潰そうとした。
咄嗟に部屋へ入って妻の腕を掴み、その紙を奪い取る。
すると妻は走って寝室を出ていき、バタンとドアを閉めた。
僕は後を追わず、その紙に書いてある文字を見た。
殺されξ
殺され?
最後の一文字がペンで消されててわからない。
だが、強くペンで塗り潰したその中に、あきらかに太さの違う線がある。
この線をなぞっていけば最後の文字がわかるはずだ。
普通に考えて、「殺され」とくれば、最後は「る」になるのだが・・・・ん?・・・「る」・・じゃ・・ない?
ガチャッ