事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ
少なくとも子供の僕には現実は厳しすぎた
またあの日がやってくる
巨大な手がスーっと伸びてくる
僕が住んでいるマンションを掴んだ
そしてガタガタと揺らし始める
9階に住んでいた僕は振り落とされまいと必死にしがみつく
大人達は周りで騒いでいるだけで何も出来ない
僕達の棟は見逃されたが、隣は持っていかれた
知り合いのオバさんは建物の下敷きになって死んでしまった
仲のよかった友達は食べられてしまうかもしれない
大好きだったお姉ちゃんも「あなたは生き延びて!」と言葉を残しそれきりだ
隣の子も引き篭もってしまった
皆が一生懸命働いて手に入れた物資は全て持っていかれた
難を逃れた者達はぐったりとしている
明日からどうやって生活していけばいいのだろう