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意味がわかると怖い話1025 「五年の月日…後悔」

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五年ぶりになるだろうか。久しぶりに父に会いに行くことにした。

墓参りなんて丁寧にやるわけでも無いので、適当な花を買ってきて供えてやる。
手を合わせ、立ち去ろうと振り向くと、一人の女性が立っている。
このような知り合いなんていただろうか、と首をかしげる。

彼女は白髪混じりの頭を振るわせながら、こんにちは、と呟いた。
そこでようやく思い当たった。昔のことだ。僕の両親が離婚したのは、
浮気のせいだった。二人が結婚する前から付き合っていたらしい愛人を、
幼い僕はひどく憎んでいた覚えがある。

小さくなってしまった彼女が、「ここにはよく来るの?」と僕に尋ねた。
「ええ」
わざと彼女をじっと見据え、「僕の父ですから」と吐き捨てた。
彼女の震えが一層大きくなる。少し意地の悪いことをしてしまったかもしれない。
何だかバツが悪くなり、僕は早足で彼女の横を通り抜けた。

「そうだ、訊きたいことがあるんです」
僕は振り返り、その女性に尋ねた。

「僕の本当の親は、どちらだったんですか?」
彼女が深く深くため息をついて、それから微笑んだ。
そして僕は、五年間を悔やむこととなった。


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