姉が体調崩したらしいとお袋に聞かされた。
結婚したものの不倫浮気だ離婚騒動だで現在もめている真っ最中だそうで。その心労だろうとの事。
正直俺は、生来気が強くて家出同然に飛び出して行った姉貴に今更関わりたくなかったんだが、
やっぱり親だから気になるのだろう、お袋は様子を見に行きたいと言う。
お袋一人で遠い町まで行かせるのは気が引けるし、結局俺が車を出して同行する事になった。
姉貴は思ったよりも元気だった。
生来の負けん気で元気に見せているだけかもしれないが。
機嫌もよかったのだろう、ニコニコしながら出迎えてくれた。
姉夫婦の持ち家である広い庭付き一戸建てで、今は一人で暮らしているそうだ。
「旦那は出てったきり帰ってこないのよ。連絡無いし、する気も無いし」
(追い出したのか)そう思ったのを悟られないようにとっさに庭に目を移す。
お袋に似たのだろう、庭は色とりどりの花で飾られている。
名前の分からない花が並ぶ中で、隅のほうに見知った花が咲いているのが目に付いた。
「あのアジサイ、うちのとは色が違うな」
何の気なしに口に出す。
「え?ああ、肥料やりすぎたかしら」
「アジサイは同じ株でも土地の成分で色が変わるのよ」
姉貴とお袋の声が聞こえた。
言われて改めて見直すと、確かに少し離れた場所で咲いているアジサイは同じ咲きかけでも色が違う。
「でも肥料が合わないみたいなら、残りは家で使おうか?ちゃんと車で来たからすぐにでも持って帰れるわよ」
「…そう?うん、じゃあお願いしちゃおうかな。手作り堆肥だからちょっと匂うかもだけど宜しくー」
「宜しくー」
「うっ…」
こういう時の息の合い方とかやっぱり親子だ。
まあ乾燥させるタイプの生ごみ処理機?で出来たものらしくて殆ど匂わなかったのは不幸中の幸いだ。
その後、姉貴は旦那とは相変わらず連絡取れないままらしい。
「ちょっと頭が冷えたからもう少し様子見る。母さんにも宜しく」
様子伺いに電話したら、姉貴はしおらしくそう話してた。