私が住んでいるアパートには、全部で6人の住人がいます。
1階の一番端っこのお部屋に住んでるお兄さんは、私の隣のお部屋に住んでいるお姉さんの事が好きみたい。
でも、お兄さんが真っ赤な顔でお姉さんを見ていても、お姉さんはまるでしらん顔で、鍵を掛けてしまいます。
毎日。毎日。がちゃんと鍵をかけてしまいます。
お兄さんの首にかかっているマフラーはとても素敵なのに。
昔は、おにいさんはよく一緒にお医者さんごっこをして遊んでくれたのだけれど、
今は遊んでくれなくなってしまいました。
おねえさんが前に、「あんな小さい子と遊んでるの?」って話してたからです。
少し寂しいけれどわたしは我慢して、おねえさんとの恋を応援しようと思いました。
お姉さんは、お兄さんがあげたおそろいのマフラーをしているから、本当はお兄さんの事好きなんですよね。
2階の真ん中に住んでいるお爺さんとお婆さんは、もうずいぶん耳が遠くなってしまったみたいです。
「おじいちゃん」
昔みたいに私が呼んでも、ぜんぜん気づいてくれません。
ふたりはたまにお庭にでて、日向ぼっこをして居ます。もうずーっとそうしています。
わたしが子供のころからおじいさんもおばあさんも、おじいさんとおばあさんでした。
きっとこれからも、ずっとそうなのだと思います。
1階に住んでいる大家さんは、とってもいじわるです。
私が少し汚れた格好をしていると、すぐに私に水をかけて洗います。
冬はとても水が冷たいのに、ごしごし、ごしごし洗います。
ざらざらのスポンジは痛くて痛くて、私が「やめて」と言っても聞いてくれません。
お兄さんがわたしをここに置き去りにしてから、ずっといじわるです。
昔は優しいお母さんだったのに。
1階の方でドアの開く音がしました。